SPCN主催の朝礼力コンテストの最優秀賞受賞サロン。どんな特徴的な朝礼をしているかと思いきや、案外、普通であるのに戸惑う。ただし主体性のある元気のよさでは最優秀の貫禄。とりわけ入念にカルテチェック、プレシンキングしている真剣な様子が印象的だった。朝礼時間は約15分。フィガロの朝礼は司会者を決める「ブーブーじゃんけん」からはじまった。
フィガロの朝は早い。午前8時30分。朝の開始を告げる賑やかな「ブーブーじゃんけん」で朝礼ははじまった。フィガロの朝礼は、①「いらっしゃいませ」などの声がけ②今日の個人目標の発表③今日のニュース④カルテチェックの順で進む。始業の合図とでもいうような「ブーブーじゃんけん」は、スタッフの元気レベルを一気に高める工夫。続いて「今日の目標をお願いします!」と進行役が声をかけると、われ先にと元気いっぱいに全員の手が挙がる。その勢いと腕が一直線に伸びた姿勢がなんとも清々しい。司会役の指名の順番に目標が発表される。スタッフ全員で高いレベルの「元気さ」を実現していた。
個人目標は昨日の振り返りを活かした具体的なアクションで述べられる。たとえば「昨日は店販のお勧めが結果につながらなかったので、今日は施術中にご案内をして、最後の会計時に再プッシュできるようにします」という具合。日次で個人目標が鮮明に落とし込まれているのが、営業のはじまりにふさわしい。ここまでは大きな声が持ち味のパート。
一転してカルテチェックは静かな流れのなかで多くの時間がかけられていた。予約のお客さまのカルテが準備されていて、ワゴンに集まり全員で確認しながらお客さまの情報を共有。過去の履歴と担当者の情報に基づいて「こんな提案をしよう」「こんな接客をしよう」「こうしたほうがよいのでは」と情報が交わされる。そうしてひとりずつどのように接するのかという行動イメージを鮮明にしていた。
約15分を使って個人がお客さまを迎えるのではなく、8名全員、店がひとつとなってお迎えする体制を整えて営業ははじまる。
SPCNが提案する朝礼のポイントは①夢を語る②目標宣言する③感謝の気持ちを伝え合う④元気に1日をはじめる、の4つだった。審査にあたったSPCN本部の松本望太郎さんは「『ブーブーじゃんけん』による元気のよさはもちろんのこと、目標宣言の積極性にしびれました。またしっかりとしたプレシンキングができていて、店全体でお客さまをお迎えする店づくりの原動力となっているのが素晴らしかった」とフィガロの受賞理由を説明する。
フィガロはCS改善に熱心に取り組んできたサロンだ。だが一度、挫折した経験をもつ。一昨年前の05年にはじめたアンケートは取得率が10%台にとどまった。「とれなくても仕方ない」というムードでいったん活動は中断。年が明けて再度、「なぜアンケートを実施するのか」の意味を問い直し、取り組む姿勢を見直して再チャレンジした。その結果がいましっかりと業績に結びついてきている。だから「CS上がれば売り上げ上がるのだ!」という商売の原則がしっかり身についていて、全員が必要性を理解してCSと向きあっているから、乱れがない。
だから目標とCSはしっかりリンクしている。「売上目標を高くすれば、CSによるお客さまとの信頼関係が高くないとダメ。だからCSを意識せざるを得ない」と迷いがないのだ。
フィガロの業績は05年12月から07年6月に向かってキレイな右肩上がりで上昇カーブを描いてきた。成長を確認するために12カ月移動平均でみると、1年6カ月で売り上げを約80万円拡大することに成功している。同店の生産性は80万円。つまり1年半かけて、スタッフひとり分の生産性を増員せずに生み出すことができるようになったのだ。組織力が上がったというほかない。
オーナーの大田貢さんは実績のなかでもとくにリピート客数に注目している。「リピート客がジワジワと増えてきているのがいちばんうれしい」と話す。06年1月の同店のリピート客数は294名だった。2月以降は300名台で推移して12月で494名になった。新規客をとらないオーナーは「リピート客数はすべてスタッフによる数字。若いスタッフの力の結果」と見ている。日ごろから「ひとりのスタープレーヤーは要らない。みんながスターになってほしい」と願う大田さんには、その成長ぶりがもっとも実感できる変化だった。しかも「まだまだ余力を残している」と言うから、さらなる進化を予感させる。
同店には売り上げを押し上げるほどのどんな力がついたのか。ひと言でいえば気配りのレベルアップだった。「みんながオーナー目線になった」と大田さんは言う。そしてCS改善に取り組むことによってお客さまに正面から向き合うようになり、お客さまの声に耳を傾けて着実に改善のための行動を起こしてきた。それが習慣となり自分たちの「当たり前」のレベルが向上している。大田さんは「販促をしたわけでもない。結局、活動のすべてはCS改善」と振り返る。「CSに対して自分たちがどれだけホスピタリティの精神になれるか。その挑戦の期間だった」と位置づけている。06年度売上伸長率平均118%は「その意識がいろいろなところに変化となって現れた結果」だった。
「お客さまの満足度を高めよう」「もっともっとフィガロを気に入ってもらおう」という意識が高ければ高いほど、わずかなCSの変化にも敏感になれる。数値が低ければ本気で原因究明にあたり、「つぎはこうしようよ」と具体的な「次の一手」で議論できる。
「好ましい変化」と起こすことができたフィガロ。第2幕は「継続」のステージに入る。
(月刊SPCN9月号掲載)
リンク・イノベーション副社長 大薮 貴之