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人間性重視のサロンマネジメント

第13回 美容室 店販強化~店販売り上げを伸ばそう~

技術売上490万円が1年後640万円になった手法とは?

 ついに最終回となりました。今回は美容師だからこそできる店販というものについてお話しをしてまいります。
 名古屋にある美容室のお話です。Fさんというスタッフさんがいらっしゃいます。そのFさんとある男性のお客さまMさんとの物語です。
 Mさんは明らかにここ数年で髪の毛が細くなり、トップのボリュームが少なくなっている状態でした。デリケートなことなのでFさんは、Mさんにどう伝えたらよいか迷っていました。しかしお客さまのことを想い、「現状を正しくお伝えして、キチンとした提案しなきゃ」と決心したのです。
 提案内容は「当店自慢の頭皮改善のヘッドスパを受けてもらうこと。そしてスキンケアとしてのシャンプーを使ってもらうこと」でした。しかしMさんが不快に思わないように、お伝えしなければなりません。「どうすればよいか」とFさんは懸命に考えました。
 そこで思いついたのが、まず頭皮をマッサージすると気持ちがいいこと知ってもらうこと、男性ホルモンの話と髪が細くなる理由を伝えること、どうすれば改善できるかというアドバイスをすることでした。Mさんが十分に心を開き、基本的な知識も知ってもらったうえで、最後にMさんの頭皮の現状を正しくお伝えして、頭皮改善のヘッドスパを提案しました。
 するとMさんも必要性を感じてくれました。ヘッドスパ前のカウンセリングは入念に行います。頭皮の状態をよりよくしていくためにどんな施術が必要か、どんなケアが必要かをFさんとMさんで話し合いました。ケア方針が一致した結果、月に1回のヘッドスパの施術とホームケアのためのシャンプーを定期購入していくことになりました。 じつはこの話には店販の極意がすべて入っているのです。お客さまのMさんは後日、つぎのようにもおっしゃっていました。
 「髪の毛が薄くなっていたのは気になっていました。そこでいろいろな毛髪診断をしてもらいました。しかしFさん以外すべての人は危機感をあおるのです。それは自社商品をすすめるためだと思いました。Fさんは違いました。わたしの頭皮を改善させることを一生懸命に考えてくれたのです」
 そうです。店販とは「商品を売ること」ではないのです。お客さまの頭皮、髪の毛、お肌、健康などをよりよい状態にするために必要なケアの方法を実践するための手段なのです。だからお客さま想いの美容師ほど、きちんと提案をしているものなのです。

お客さまはプロの視点でおすすめしてくれることを求めている

 私は「ナカノ」のファイバーのワックスが好きです。以前どこかの美容室で使っていて、そのときスタイリングがばっちり決まり気に入ったのです。「今日、この場で買って帰りたいな」と思ったのですが、こちらから「それいくらですか?」と聞くのは勇気がいりました。結局、聞けませんでした。商品が置いてあれば買ったのですが、残念ながらありません。そのときは、「まあ、スーパーで買おう」と思って家に帰ることにしました。
 さてお気づきのとおり、このワックスはスーパーでは売っていませんよね。だからそれからが悪戦苦闘の日々でした。近くのジャスコや隣町のイオンのショッピングセンターも、どこで探してもないのです。いま思えば当然なのですが、売っていません。仕方なくほかのメーカーのワックス買ったのですがスタイリングが決まらず、さらにがっかりしました。
 しばらくして行った美容室でまたもやナカノに出会いました。そのときもオススメがなく、やはり買えませんでした。そのつぎに行った美容室にもあったので、今度は勇気を出して私から言いました。「それください」と。
 同じような体験を私は何度もしています。スタイリング、シャンプー、トリートメントなど美容師のプロの知識・技術は本当にすごいものだと思います。だからこそ、そのプロの知識、技術を自宅でできる限り再現したいと思っています。しかしアドバイスなくしては、できるわけがありません。お客さまはいまこそプロのアドバイスを求めているのではないでしょうか。

店販商品を売る方法はお客さまと感情の階段を昇ること

 なんのために店販商品をオススメするのでしょうか。けっして自分本位ではいけません。「お客さまのために」という思いがあって、お客さまも本当は提案を求めているということが心から理解されたうえでお伝えしたいことがあります。それは「店販商品を売るためのキラートークはない」ということです。
 「このセールストークを使えばしっかりプッシュできる」――。そんな魔法のようなトークがあるとお考えの方がいらっしゃいます。残念ながら、ありません。あるひとつの決り文句でお客さまに「買いたい」と思っていただくのではなく、お客さまが「買いたい」という気持ちになるように徐々に感情の階段をいっしょに昇っていくようなイメージなのです。ここでは例として頭皮ケアをオススメすることとしてみましょう。

〈①お客さまに想いをぶつける〉

「本当にお客さまの頭皮を改善したい」という想いをぶつけます。「この人は本当にわたしのことを考えてくれているのだな」とお客さまが共感をするのがゴールです。

〈②理想の頭皮のコンディションを共通のものとする〉

「○○さまにとって理想のヘアのコンディションは、○○な感じでお間違えないですか?」などと質問をしながら、ヘアコンディション、頭皮のコンディションの理想像を確認し合います。

〈③頭皮改善を目的としたパーソナルカウンセリング〉

しっかりと勉強しておく必要がありますが、パーソナルカウンセリングをしっかりとします。店販商品を売るためのカウンセリングではなく、理想の頭皮のコンディションになるための現在の状態をしっかりと見極めることを目的とします。

〈④○○さまの理想の頭皮を実現するためのケア方法を握り合う〉

カウンセリングを元にしたケア方法をアドバイスします。そのケア方法について十分にご理解いただき、これからいっしょにケアをしていくことを確認し合います。

〈⑤ホームケアとして店販商品をオススメする〉

ここまできてホームケアの処方箋のような形でシャンプーなどの店販商品をオススメします。ここまでのステップを1つひとつ昇ってきていれば、自然と売れます。

 この5ステップで大切なのは途中を飛ばさないということです。ひとつひとつしっかりとお客さまの理解、納得の具合を確認してステップアップすることが大切です。飛ばしてしまうとあとで「押し売り」となる場面がでてきてしまいます。

 1年間の連載となりましたが、人間性重視のマネジメント講座はいかがでしたでしょうか。ただたんに人間性を高めるのではなく、それが目に見える成果(売上拡大や客数アップなど)につながるよう、具体的な手法もお伝えしてきたつもりです。1つひとつしっかりと行動に移すことができれば、お店はかならずあなたの理想のサロンになります。みなさまのサロンの、ますますのご発展をお祈り申し上げます。

美容の経営PLAN(女性モード) 2007年8月号 記事転載

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